人の造りしもの、丹波焼の里を訪ねて。兵庫県篠山市(前編)

 「エピローグ」

 「ネンオシャチエブクトーバシメ」山田はいつも出発前に呪文を唱える。別にこの呪文でヒットポイントが回復したり寝不足が解消されたりしないのが残念だが、この呪文は点検の呪文なのだ。ネン=燃料(ガソリン)オ=オイル、シャ=車輪、チエ=チェーン、ブ=ブレーキ、ク=クラッチ、トー=灯火類、バ=バッテリー、シメ=ボルトの締め増し、この呪文を唱えながらいつものようにステップワゴン君の周りをグルっと周る。すると、車体左側の下の方、ガリガリッと何かでこすった様な傷があるではないか!まあビッグでグレイトな山田はそんなことは全く気にしないのだが、気のせいではないかと、さりげなくもう一周回ってみたり、ただの汚れかもと、さりげなくタオルで拭いたりしてみたがやっぱり何かでこすった様の傷はしっかり何かでこすった様な傷だった、あーあ。

 さて、前置きが少し長くなってしまったが今回の車中泊の旅(今回は車中泊はしないけど)は少し趣を変えて陶芸なのである、そうあの陶芸。最近は新型コロナの影響で外国の観光客もほとんどいないが外国人観光客にあのスシ、ゲイシャに次ぐ人気、かも知れないトウゲイである。ここは日本人として陶芸のひとつでも出来なければ今後のおもてなし活動に支障がでるやも知れぬ、と勝手に思い立ち、今回の旅は丹波焼の里、兵庫県篠山市今田を目指すのだ。

 

「無事これ名馬」

 まずは国道428号線を北に向かう。神戸の中心街から10分しか走ってないのにもう景色は爽やかな六甲山の緑の中だ、、と前回の「秋の気配と幻の巻き寿司を探して 兵庫県多可町、神河町」でも見掛けた様な書き出しで申し訳ないのだが同じなのでしょうがない。そんな紅葉にはまだ早い緑の中をぐんぐん北上する。428号線の北端、「吉川インターチェンジ」を右折、そして県道512号線に入りまたぐんぐん北上する。六甲山も抜けてこのあたりはのどかな田園風景が広がる。314号線に入りぐんぐん北上していると交通事故を見た。事故を起こしたい人などいないと思うがなかなか無くならない。「お土産は無事故でいいよ、お父さん」(山田の場合。人によってはお母さんでも可)なのである。こころと財布には余裕を持ちたいものである。県道75号線を東へ向かい県道292号線に入れば目指す「陶の郷」(すえのさと)はもうすぐだ。

 

「レンタルサイクルとは」 

 開店5分前、無事「陶の郷」に到着。今回なぜこんなに早く来たかと言うとレンタルサイクルを借りるためなのだ。「陶の郷」にはレンタルサイクルがあるのだがそんなに台数はないであろうと用意周到な山田は読んだのである、さすがビッグでグレイトだ。開店と同時に受付を済ませてレンタルサイクルとご対面~となるわけだがそのレンタルサイクル、駅前の放置自転車と大差ないレベル、う~ん。係りのお姉さんが空気入れでシュコシュコ空気を一生懸命入れてくれるのだがそれも申し訳ないくらい。「陶の郷」の予算関係の部署の方、お読みでしたらいろいろご事情もおありと思いますがレンタルサイクルの更新をお願いします。

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「陶の郷」(すえのさと)入口の橋のホタルのオブジェ、一瞬「G」に見えてドキッとさせられる。

「自転車の旅」 

 そんな空気も油も不足気味の自転車に乗って、受付で貰った地図を頼りにまずは「おみの木」を目指す、すぐ着いた。「陶の郷」から川を挟んで反対側、巨木の威容は遠目にもひときわ目立つ。アベマキの木としては兵庫県最大らしい。根元にある小さな祠にまずはお参りをする。「おみの木」のすぐ隣にはこれまた「丹波焼最古の登窯」があり、兵庫県指定の文化財となっている。この二人のおじいさん達(おばあさん達でも可)は「今日も平和じゃのぉ」みたいな会話をしているのだろうか、そんな二人に見守られて山田の自転車はフラフラ北上する。

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「アベマキの巨木」安倍真紀さんや阿部真樹さんには最強のパワースポットになること間違いなし。手前に小さく写るピンクのレンタル自転車がイカす。

 「自転車の良さ」 

 このレンタル自転車、ボロだがふだん山田が乗る自転車に比べてサドルのケツ当たりがいいと言うかお尻に優しいのが嬉しい。少し行くと古い神社を見つけた。お参りに立ち寄る。名を「住吉神社」と言い1653年、立杭村成立時に小野原住吉神社から分祀されたこのあたりの氏神様らしい。柏手を打つ音が森に響く。

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住吉神社」 風の音が聞こえなければ時が停まっているかのような気さえしてくる。

 自転車で更に進むと道端に栗が落ちているではないか、もったいない。栗と言えば山田にとっては高級食材のイメージ。丹波の山里は自然が豊かな証拠か、そう言えば丹波では杉の植林をあまり見なかった気がする。焼き物の燃料には木材を使用するから自然林が残ったのか、ダイバーシティ(多様性)で豊かになるのは自然も企業も同じなのだ。そんな栗を見ていたらそろそろお腹が空いてきた。どこかいいお店はないかなと、探しながら進むとありましたよ、M's Dining「くりの実」おぉ、これは運命的な出会い、と喜び勇んでお店に入るが本日はご予約で満席と丁寧にお断りされてしまいました。まあビッグでグレイトな山田は気にしないけどまた昼飯難民の予感が、、。

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「道端の栗」 ステップワゴン君だったら気付かなかった。ゆっくりな自転車だったからこその小さい秋見つけた、である。

    

人の造りしもの、丹波焼の里を訪ねて。兵庫県篠山市(後編)に続く(近日公開予定)